第六章 飛翔せしもの

20/27
前へ
/27ページ
次へ
 相変わらずニコニコしている虎蔵じいさん。 「さあて、それじゃあ早速、修行でも始めるかの」 「はい……え!?」  虎蔵じいさんが言った一言に俺は思わず驚きの声をあげた。 「こ、ここでですか?」  外だと言うのに周りは電車の中よりもかなり人口密度が高い。  まさか、さっきみたいにバランスを取って立ってるだけってわけにも行かないだろうし。  かと言って、この固いアスファルトの地面の上で投げ合うわけも……。 「さあ、どっからでも掛かって来なさい」 「え!?」 「ジョークじゃよ」 「当たり前でしょ」  ホッ。  愛氣の言葉に胸をなでおろす俺。  でも虎蔵じいさんが言うとジョークに聞こえないんですけど。 「まあ、投げ合ったほうがある意味ラクだったかも知れんがのう」  だんだんと虎蔵じいさんの笑顔が、気味の悪いものに思えて来たぜ。  目の前には有名な渋谷のスクランブル交差点。  渡りきった先にセンター街の入り口が見える。  その更に左にはこれまた有名なお姉様がたのファッションの聖地『109』。  信号が青に変わるたびに溢れそうな人混みがこれでもかと行き交っている。    
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加