第六章 飛翔せしもの

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「ホッホッホッ。まだまだじゃの~」  でもスゲーよ。 『あの娘は天才じゃ』  いつか真夜中の道場で俺に言った虎蔵じいさんの言葉が頭の中に響いて来ていた。 「さ、次はお主の番じゃぁ」 「あんま似てねぇぞ。そのモノマネ」 「いいから、直人も次信号が変わったら行って来るのよ」 「でもさ、俺あんなの出来ねぇって……」 「そんなのやってみないとわからないじゃない」 「そうじゃぞい。直人もなんのかのと言っても一ヶ月くらい毎日稽古して来たんじゃ。まずはやってみい」  そうだよな。  俺、結構真面目に稽古してたもんな。  意外と出来ちゃうかもよ。  天才、長尾直人ここに覚醒。  ……かもよ。 「わ、わかりました」  俺は横断歩道の白線の前に立って信号が青に変わるのを待った。 「良いか。この信号は四五秒で赤に変わる」 「はい」 「もし間に合わなかったら、無理に戻って来ないで向こうで一旦待つのじゃぞ」 「大丈夫です。二十秒目指して来ますから」 「オッ、直人その意気、その意気!」 「俺は脚は速いほうなんだ」  そう、実は俺は五十メートルを六秒五で走れる。  中二にしては結構速いほうだろ?  
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