第六章 飛翔せしもの

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 これくらいの距離、人がいなけりゃ十五秒もあれば充分だろ。 「これ頼むよ」  黒い学ランの上を脱いで愛氣に手渡す。 「うん。がんばってね!」 「ああ、まあ見とけよ」 《スー、ハァー》  深呼吸する俺。  車用の信号が黄色に変わる。  そして、歩行者用の信号が青に……。  Readyー……GO!!  俺は勢い良く飛び出した。  そして華麗に人波をすり抜けて、あっと言う間にセンター街の入り口のある向こう側に……。  行くはずが、目の前に立ちふさがる人、人、人に(はば)まれて全然前に進めない。  動く壁に押し潰されそうだ。  速く動こうとして、向こうから渡って来たふたり組の女子高生達とぶつかりそうになる。 「ちょっとどこ見て歩いてんのよ!」 「す、すいません」  謝りつつ前を行く俺。  ダメだ。  全然前が開かない。  もうそこどいてくれよ。 「フゥ~。やっと見えて来た」  やっと片道を渡り終えた俺は愛氣達のいる駅側を振り返った。  信号は?  まだ青だ!  もう赤かと思ったけど意外と速く渡れたみたいだ。  よし、帰りはもっとスムーズに行くぞ。  そう思い横断歩道を何歩か渡りはじめた時。   
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