第六章 飛翔せしもの

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 向こう側の青信号が点滅して赤に変わろうとし始めた。  クソッ!  このまま終われるかよ。  たまには愛氣にカッコイイとこ見せなきゃ。  まだだ。  まだ間に合う。  みんなが渡り終えた後を走って行けば、何もない直線を走るのとおんなじじゃん。 「よし。行ってやるぜ!」  決意した俺は引き返す速度を速めた。  だけど意外とみんな遅い。  信号が点滅してるのに思ったより速く歩いてくれない。  なんでだよ。  早く行ってくれよ。  後ろでイライラする俺。  交差点の丁度真ん中に来た時。 「あっ!」  焦りすぎて、その場に転んでしまった。  そして、無情にも信号が赤に変わるのが人混みの間から見えた。 《プップッー! プーッ!!》  交差点のど真ん中で立ちんぼ状態の俺に、車のクラクションが鳴らされる。 「直人っ! 早くっ!」  向こうから愛氣の声が聞こえる。 《プーッ!》  車が少しづつ近づいてくる。  オイオイまさか、引き殺す気じゃあないだろうな。  なんとか立ち上がろうとする俺。 《ブーンッ》 「え?」  まさか……。  俺は目を疑った。
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