第六章 飛翔せしもの

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「ありがとうございます。ちょっと熱が入った部員達がはみ出してしまうかも知れませんがお気になさらずに」  そう言って鮫嶋は一礼すると再び畳のほうに向かって歩いて行った。 「ニヤニヤして気持ち悪い。なんか爬虫類みたい」  隣で愛氣が呟く。  確かに、いきなり態度が変わったのなんてカメレオンみたいだけど……。  それより……。  俺は見逃さなかった。  鮫嶋が一礼して向こうを向く時一瞬鋭い目をしたのを。  あれは一体……。  あいつなんか変なこと考えてんじゃないのか?  それともただの俺のヘンケンだろうか?  だったらいいけど……。  結局、道場を半分に分けて二組の稽古が問題無く行われることになった。  鮫嶋はなんか意味ありげなことを言ったけど、特に柔道部員達がはみ出して来るようなことも無かった。  柔道部は相変わらず熱の入った練習をしている。  もちろんあの宍戸も。  一方、俺達の方はゆっくりとしていて静かなもんだ。 『健康合氣道倶楽部』は『妙心館』の一般部よりも全然優しい稽古になっている。  受け身中心で激しい技もやらないし、虎蔵じいさんも大体見てるだけでほとんど宏治郎さんが指導していた。   
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