第六章 飛翔せしもの

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 ときたま、柔道部員達が白い袴のじいさんを珍しそうにチラッと見るが、何もしないの  でそのうち誰もこっちを見なくなった。  俺と愛氣も唄子さんや年配の人達とまったりとした稽古をしている。  なんか愛氣との『妙心館』での稽古に慣れて来た俺にとっては正直ここでの稽古はもの足らない。 《ふわぁ~あ》  一週間の疲れも重なって、軽くちょっと眠気さえ催して来たかと思ったその時――。 《ドッターンッ!》 「――!」  なんか道場全体が響くすんごい音。  思わずそっちを見た俺は自分の目を疑った。  なんと、宍戸の巨体が畳に伸びているじゃんかっ! 「うそ。あの宍戸が……」  愛氣もかなり驚いてるみたいだ。  唄子さんとの稽古を止めて倒れた宍戸を見てる。 《ドッターンッ!》  また、畳に叩きつけられる宍戸。  一体誰が……。  俺は宍戸から投げた相手に視線を移した。 「オラッ、どうした勝家(かついえ)ぇー。立てよ」  身長は宍戸より少し高いけど体格は遥かに細い。  いや、引き締まっていると言ったほうがいいか。  柔道着からでも、その筋肉質な身体(からだ)が分かる。  短髪の逆立てた黒髪の黒帯の選手。   
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