第六章 飛翔せしもの

8/27
前へ
/27ページ
次へ
二、空白の時を見つめて 「愛氣っ!」  俺は叫んだ。  勢い良く畳の上に叩きつけられる愛氣。 「クッ……」  苦痛に顔を歪める愛氣。  今、目の前では愛氣が宍戸行長と『対決』していた。  立ち上がり行長に掴み掛かりに行く愛氣。  しかし……。 「――っ!!」  愛氣は行長に腕を掴まれ宙を舞う。  そして見事に行長の一本背負いが決まった。  畳に仰向けに倒れたまま動かない愛氣。  一体どうしちゃったんだよ。  いつものお前ならそんな簡単に投げられたりなんかしないはずなのに。  行長は愛氣を無理矢理愛氣を立たせると、愛氣の腹に拳の一撃を喰らわせる。 《ズンッ!》  その場にくず折れる愛氣。 「直人……」  愛氣が虚ろな瞳で俺を見ている。 「助けて……助けて、直人……」 「愛氣っ!」  俺は愛氣のもとに走りだそうとした。  しかし……。 「――!」  俺の帯を後ろから掴んだ奴がいた。  ゆっくりと振り返る俺。  そこにいたのは宍戸弟、勝家だった。  必死にその手を振りほどこうとする俺。  だけど、まったく勝家には通用しない。 「直人、助けて、早く。あたし、負けちゃうよ……」  行かなきゃ。  涙目の愛氣が俺を呼んでる。   
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加