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そんな葛藤をしている様子を隣で見ながら恒貴は微笑ましく思った。
やがて完全に眠りに支配された彼女はぐらぐらと揺れ始め、反対側へ体が倒れていく。
―あっ!倒れるならオレの方だろ。
嫉妬心もあって恒貴はこっそり彼女の体を抱き寄せると彼女の頭を自分の肩に乗せた。
すると彼女はそれを受け入れるように恒貴に体を預けた。
重ねた手からぬくもりが伝わって今度は恒貴まで睡魔が襲ってくる。
―オレも眠くなってきちゃった…。
そして気が付けば2人寄り添うように眠っていた。
地元の駅に着いた頃、空はオレンジ色に染まっていた。
「今日、楽しかったね!」
「うん」
「そういえば私、まだ恒貴に誕生日のプレゼント渡してないよね」
そう、実は恒貴は先日誕生日を迎えたばかり。
この日は誕生日お祝いのデートも含まれていたのだ。
「何?何かくれるの?」
「あのね…」
紗千は恥ずかしそうに言いよどんだ。
「ん?どした?」
「えっと、その…今日、恒貴の家に行ってもいいかな?」
思いがけぬ提案に恒貴は目をパチクリさせた。
まさか紗千からそんなことを言い出すなんて思ってもみなかった。
「オレの家?来るのは全然いいけど…それって…」
恒貴は途中まで言いかけて、思い直したように言い直した。
「あーごめん、やっぱダメ!オレん家来たら帰せなくなっちゃうから!!それは良くない。まだ高校生なんだし、紗千の両親に恨まれたくない」
意外だった。
というのも彼は常識にとらわれるタイプではないと思っていたから。
「恨まれる…?」
「普通の親なら高校生でお泊りなんていい顔しないよ。将来、オレの親になるかもしれないんだからそこは慎重にいかないと。だからまだお泊りはダメ!」
それを聞いて紗千はなんだか嬉しくなった。
将来のことなんてわからないけど、ちゃんとこれから先のことまで考えてくれているってわかって頼もしく思えた。
「まさかそんなこと言われるとは思わなかった…。恒貴、意外とちゃんと考えてくれてるんだ?」
「当たり前だろ。オレのことなんだと思ってるの?これでも少しは考えてるよ」
「見直した!」
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