星の群れ

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 その目から心が抜け落ちる。半眼になり、彼女はそう呟いた。  ――あたしの願いが叶うなら。  聞こえない言葉が続いたような気がした。  緑柱石の瞳に翳りが落ちた。それを見つめて、僕は言いようもなく哀しくなる。  僕がいつもレーテの、幼馴染の後ろを追っていたのは、彼女が他人に背を向けようとばかりするからだ。そう、顔を見られまいと。  いつも怒ったように不機嫌顔なのは、本心からの表情を隠すため。  彼女の、本当の顔を隠すため。  レーテ。  僕は視線を空へと移す。  無邪気に瞬いていたはずの星が、ふいに泣きそうな光に見えた。 「……あんなにたくさんの星を、相手にする必要ないんじゃないかな」  空気にのって、レーテの呼吸が聞こえる。  静かに、ひそやかに、魔術師は生命活動を繰り返す。  僕はその孤独な魂を思う。この世の片隅で、誰にも認められることのない研究に打ち込む人。人を遠ざけながら、一方で人に依存せずにはいられない人。とてもとても臆病で、そして愛情深い人。  僕は満天の星に顔を向けながら目を閉じる。     
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