星の群れ

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「いちいちうるさいわね母親かアンタはっ。今戻ろうと思ってたところよ!」 「それは失礼」  魔術師は憤然と肩を怒らせ、ひらひらのスカートの裾を持ち上げながら部屋に戻っていく。  と思ったら部屋に入る直前にカッと振り向き、 「それ片づけておきなさいよ!」  テーブルの上のカップを示して怒鳴ってから部屋に引っ込んだ。  完全にその姿が見えなくなったところで――僕はぷっと噴き出した。  少しばかり意地悪がしたくなっただけだ。彼女の意識から、彼女に力をもたらす星の群れを弾き出したかっただけ。  ほんの一瞬で構わなかった。  彼女が見ている星は僕じゃない。彼女が星に力を求める理由も僕じゃない。僕がずっと見つめている星は、決して僕の方を向かない。僕の手に落ちてきたりしない。  “それでいい”と自分に嘘をつく代わりに、せめて。  僕は夜空の星を振り返ることなく、のんびり部屋に入った。  魔術師先生はランプ片手に、ごみごみした何かをごそごそと漁っている。その後ろ姿に、僕は声をかけた。 「寝る前にもう一杯イゴニア、いる?」  ――もらうわ、の一言にかけがえのない日常が滲む。 「了解」  いつもの通りそう答えて、僕は幸せの形に、笑った。 (了)
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