星の群れ

4/14
前へ
/14ページ
次へ
 女史はイライラと、そんなことはどうでもいいのよ――とささくれ立った声で唸った。ぞんざいな手つきでティーカップを取り、一息に飲み干す。 「ゆっくり飲まないともったいないよ、レーテ」 「なくなったらアンタに淹れ直させればいいだけでしょ」 「そりゃ何杯でも淹れるけどね僕は。でもそれを繰り返してたら太るよ? イゴニアは甘いからね――服着られなくなってもいいのかな。その服、仕立て屋のアンナちゃんが初めて作った記念の服でしょ」  うぐ、と女史は喉を引きつらせた。  ランプが照らし出す魔術師先生の衣装。炎と同じ色の衣装は、激しい気性の女史によく似合う。女史に懐いている村の小さな女の子が、初めて一人で仕立てた服。実験中はもっと汚していい服を着ていたはずなんだけれど、いつの間にか着替えたらしい。多分、実験が終わったから気分を変えたかったのだ。 「……細かいことをいちいち覚えてるんじゃないわよ」  ぼそぼそと女史は言った。まるで恨み言でも言いたそうな声だが、僕は気にしない。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加