星の群れ

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「うっさいわよアンタあたしを一体なんだと思ってんのよ」  険悪な声で唸った女史は、肩に載った髪を豪快に後ろに跳ね除け、ふんと顎をそらした。 「あたしが星に興味を持つなんて、星の秘めるエネルギーが目当てに決まってるでしょう」 「――僕の中の女史はそのままでよさそうだね」  全くもってレーテらしい言葉だ。僕は女史から見えないようにひそかに苦笑した。  レーテは昔からそうだった。可憐な花を見れば「このか弱そうな風情が子孫繁栄のためにどんな風に作用しているのかしら」とか呟き、雄々しい樹を見れば「この生命エネルギーを魔力に変換したらどれくらいの量かしら」とか呟く。十に満たないような子供の時分から、そうだったのだ。  そして僕はそんな女史の後ろを、延々とついて回っていた。物心つく頃からずっと。  可愛げのない言動のために、段々味方をなくしていく少女の後ろを。 「もしも星を手に掴めるならキミはどうするの?」  僕は尋ねた。  魔術師先生は、ぴんと細い眉を跳ね上げた。「そうねえ」と顎に指をかける。  緑柱石の瞳に光が灯った。情熱的な、好奇心の灯火。     
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