星の群れ

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「まずは質量をどうにかしないとね。星を手繰り寄せたらとんでもないサイズになるだろうから……そうでなくてはエネルギーの抽出のし甲斐がないけど。それから、そうねえ。どういった種類のエネルギーかを調査して……どういった力に変換可能かも……問題は現在でもエネルギーを保っている星がどれだけ空に残っているかなのよねえ。光の伝達速度を考えれば、今見えている星が何年前に生きていたものかもちょっと分からないし……」  途中からは、もはや独り言でしかない。  それをずっと聞いていてもよかったけれど、僕はあえて遮った。 「そうじゃなくてさ。もし可能なら、そのエネルギーを何に使いたいの?」  レーテが初めて僕を見た。  ぽかんとしている。虚を突かれて、言葉を失っているようだ。僕はゆっくり繰り返した。 「――何か、大きなエネルギーを手にして、やりたいことがあるんじゃないの?」  一拍の間の後。  村では山姥とも評される魔術師先生の頬が、熟れた果実のように赤く染まった。眉と目つきがみるみる吊り上り、今にも噴火しそうに紅唇が開く――が、何かが直前で激情を堰き止めたようだ。  すとん、と音がしそうな風情で、女史は顔から力を抜いた。  そして睨みつける場所を探して視線をさまよわせながら、前髪を掻き上げた。 「馬鹿ね。あたしはただ星のエネルギーの正体を見極めたいだけよ。使い道なんかまだ考えちゃいないわ」 「そっか」  僕は微笑んで頷いた。     
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