死神に捧げる最期

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そんな風に頭の中で考えている 私は今……微塵の恐怖も感じていない 「………………」 苦しい息の最中でも ただ見つめる先はさっきと変わらない 冷たいコンクリートの天井 「……ッ………… 亮司さん……こいつ頭おかしいですよ!」 非難の声を上げる先には 部屋の隅にある椅子に座り 優雅に長い腕と足を組んで 私達の情事とは程遠いやり取りを そのオニキスの石のような どこまでも淀みなく真っ黒な瞳が 何の感情もなく見つめていた カチッ…… その人はその言葉に眉1つ動かさず 胸ポケットからタバコのケースを 取りだして唇に一本くわえると ライターの灯火を翳す 「ふぅー……」 その一連の動作はまるで 映画の銀幕スターのような 妖艶さを漂わせて 「竜神会の会長が匿ってた女だからって 連れてきましたが…… 的外れだったかもしれませんよ? それともクスリで頭がイカれてんのか?」 パシッと頭を軽くはたかれる さっきの力の加減が分らないような バカみたいな力ではなかった カチャカチャと音をさせながら ベルトを直すその人は椅子に座る その銀幕スターのような人の側に 頭を掻きながら歩いていく
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