[佳乃編]一歩、前へ

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最後の一言は余計だよね? 私は平気なんだけど 周囲の人々が固まってるじゃないのさ。 どうしてくれるのよ、 この寒々しい空気。 などと思いつつ、 聞こえないフリで冷やしトマトを頬張る。 すると。 隣席の西崎主任がスマホを見せながら 笑顔で話し掛けてきた。 この人は営業部の中でも特に気さくで、 何故かしょっちゅう私に構ってくるのだ。 32歳・既婚。 ただいま奥さんは3人目を妊娠中らしい。 「そっか佳乃ちゃん、ヨリ戻したんだね」 「えっ?な、何のことですか?」 光の加減で黒く見えていたスマホ画面を、 目の高さに上げたかと思うと、 LINEのメッセージを何度も指さす。 「…私が読んでもいいんですか?」 「どうぞどうぞ」 そこにはこう書かれていた。 >Facebook見たぞ。 >3人目、おめでとう。 >報告遅れたけど、俺、帰国してる。 >んで、佳乃と一緒に住んでて、 >また付き合うことになったから。 >(お試しだけどな) …こ、これは紛れもなく和真だ。 「あの、西崎主任って…」 「やっぱ覚えてなかったのかあ」 泣き真似しながら、 おしぼりで目元を拭きつつ 西崎主任は説明を始める。 「俺、和真と大親友なんだけど。 佳乃ちゃんと海に行ったこともあるよ。 こんなに素敵なイケメンを、 キミはどうして覚えていないのかな?」 「……」 あんな数日間だけの接触、 しかも大人数のうちの1人。 忘れるに決まって…いえ、ごめんなさい。 そしてココから、 怒涛の展開となるのだ。
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