第2章 理科室での出来事

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第2章 理科室での出来事

さて、俺は、理科の授業が終わり、つかの間の休息をしていた。時計の針は午後四時三十分を指していた。部活や委員会に所属していない生徒は、もう帰る時刻だろう。俺は明日の授業に使うプリントを作っていた。プリントを作りつつ、俺は朝の教頭の会話を思い出していた。ここ、第一理科室に出るというあの「理科室の亡霊」についてだ。理科室の亡霊そんなものがいるとは、俺も思ってはいない。ただそれは亡霊なんて言う非科学的な産物にたいしてだ。実際いるとするならば、それは百パーセント、人間による犯行だ。だが、もしそうならば一体そいつはなんのためにこんなことをするのか。そこが疑問である。俺がなぜ、急にこんな事を考えるようになったのかというと、それは、俺の周りでも、その「理科室の亡霊」がでたという噂がでてから変なことが起こっている。例えば、朝の粉だってそうだ、第一理科室であの粉を使う実験や授業は、今年に入ってから、まだ一度もやっていない。ということは、あの粉は、何者かが第一理科室に無断に侵入して粉を落としていったとしか思えない。他にもいくつか思い当たる節はある。例えば、朝に教頭には言っていないが、実験器具の一つである三脚の位置が微妙にずれていたり、アルコールランプに入っているメタノールの量が減っていたりしていた。もしこれが全て亡霊の仕業なのだとしたら。まあ、単なる思い違いなだけだとも思うが。俺がそんなことを考えながら、プリントを作っていると、トントン、トントンと2回ノックをしてから「失礼します」と女子生徒の声がした。俺はその声の方を向くと、その女子生徒は「先生に言われたワークを提出しに来ました」と言った。ワークというのは、授業中に使う理科のワークのことで、俺はそれを毎回、生徒たちに提出させているのだ。俺は「わかった。そこの教卓に挙げといてくれ」と言うと、その女子生徒は「はい。わかりました」と言ってから30冊はあるワークをドンっと教卓の上に上げた。俺はその女子生徒に「えーと・・・」と名前を思い出していると、その女子生徒は俺が名前を思い出せないでいたことに気づいたらしく「1年2組の栗原です。栗原霞といいます」と言った。俺は「あーそうそう、くりはら、悪いな栗原」と言った。
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