第三章 千里眼

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第三章 千里眼

「理科室の亡霊を見た」今、間違いなく栗原はそういった。その表情からは嘘をいっているようには見えなかった。俺は「それは本当か?」と聞き返すと栗原は「はい。はっきりと見ました。あれは間違いなく亡霊です」続けて俺はこう聞いた「亡霊を見たって具体的には何を見たんだ。顔か手かはたまた体全部か」と俺が聞くと、栗原は顔を横に振り「いえ、私が見たものは・・・。亡霊の体の一部とかそういうのじゃなくて、亡霊のその魂というか何というか・・・そう、よく墓の前に出るといわれる火の玉です。私はその亡霊の魂である火の玉を見たんです」とはっきりと言った。火の玉、今までとは全く違う目撃証言で俺は内心驚いた。だが栗原が嘘をいっているのではないとするとやはり本当に見たんだろう。その火の玉を。俺はそれをもう少し詳しく聞こうとこう質問した「栗原、お前はいつ、どこで、その火の玉を見たんだ」「えーと、あれは、私がまだ中三だったから去年の12月ですかね。」すると栗原は窓の方へ行き、学校の向かいにある二車線の道路を指さしながら「あそこで見ました」と言った。「つまりお前は、少なくとも学校の中から見たわけではないということだな」「はい。そうなります」「なるほどじゃあ、その火の玉をみた大体の時間を、覚えている範囲で教えてくれ」すると栗原は次に壁に掛かっている時計を見ながら手を折って「多分5時30分くらいだったと思います」と言った。大体いままで出ている情報と時間帯は一緒だな。ただ問題は目撃場所と目撃したものに、くい違いがあるという点だ。栗原は俺に「先生、私は基本自分で見たもの以外には、そのものを信じないことにしてるんです。だけど今回は私は生でそれを見てしまった。あれを見たときからずっと、あれ(火の玉)が気になってたんです。だから先生もし亡霊の正体がわかるんだったら私にも教えてください」と言った。俺は「わかった。この亡霊の正体がわかりそうになったら、お前にも教えるよ」というと栗原はうれしそうに「じゃあ、待ってます」と言った。俺は栗原と他の目撃証言の食い違いについて考えていると、栗原が「あのー先生私もう帰ってもいいですか」と申し訳なさそうに言った。「ああ、すまん引き留めちまったな。もしまた何か思い出したら教えてくれ」と俺が言うと栗原は「わかりました。では失礼します」といって栗原は帰っていった。
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