プロローグ 

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プロローグ 

『理科室に亡霊が出た』 その噂を聞いたとき、彼女は内心非常に困っていた。 どこかの誰かが、興味本位でやってくるかもしれないし、誰かにあとを付けられているかもしれない。そんなありもしないことを無性に考えてしまう。 どこの誰が一番最初に言ったかはわからないが、そんな噂がほんの数ヶ月いやほんの数週間で一気に広まった。彼女は焦っていた。なんとしてでも、あれを完成させなくてはと、本来であれば、完成しているはずが、たくさんの偶然により彼女の計画はうまくいかず、今ではあと少しのところで、手こずっていた。 「絶対に、成功させる・・・。それが私とあの人の約束だから」 彼女は高鳴る胸を押さえ、もう一度、大きく深呼吸をした。それから彼女は 「私はやれる。私は大丈夫。きっとうまくいく」 そう、自分に言い聞かせ、彼女は冷たい、引き戸を開けた。 そうして彼女はまた、人間から亡霊へと魂という名の何かを変えるのであった。
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