第一夜 子どもたちが屠殺ごっこをした話

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「おそらくバルバラちゃんは、ドミニク君の家の鍛冶場倉庫で何かを目撃した。子ども心に面白い何かを」  マイが心底つまらなさそうに茶々を入れてくる。 「でもバルバラちゃんが真相を伝えないままに、今回の事件が起こって亡くなってしまった。これって偶然にしては少しできすぎているんじゃない? 執行人さん」 「何が言いたいんだ」  マイの目がすっと細くなる。  どこか猫を思わせるいたずらっ子な雰囲気はすでに消え去った。  代わりに不吉なまでに禍々しい雰囲気をまとっている。 「つまりよ。最初から今回の屠殺ごっこは仕組まれていた。刃物でバルバラちゃんを事故に見せかけて口を封じさせた、黒幕がいるんじゃないかってこと」 「証拠はあるのか」 「無いわそんなもの」 「ばかばかしい」 「今のところはね。でもあきらめたくないの。まだ二日残っているのだから」 はっ、とマイが短く息を吐き捨てて嫌みな笑みを浮かべる。 「なかなかどうして魅せてくれるじゃないか。こうでなくては猶予の意味が無いというものだ。だが分かっているなカッシーよ。童女の嫌疑を晴らすことができなかったあかつきには」  どうっと不意に一塵の冷たい大風が吹き荒れた。  だから執行人の言葉の最後を、うまく聞きとることは誰にもできなかった。  マイはただただ、にいっと唇が歪められ酷薄な笑みを浮かべているばかり。  いつしか赤い太陽は山の稜線に沈みかけ、濃密な夜の気配が辺りに満ち始めていた。
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