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よく晴れた次の日。
マイに朝食をご馳走になった私は、彼女を連れて議事堂へ赴いた。
保管されているバルバラの命を奪ったナイフを、一目見ておきたかったからだ。
それに事件の一部始終を目撃していたという、王立議員の話も聞きたい。
街の権力者であるはずの王立議員たち。
なぜかマイには平身低頭といった態度を取るので、調査は比較的容易に行うことができた。
「ビルギットがバルバラを刺したことに間違いはございません。私がこの目で確かに見ました」
「その点に関してはビルギットちゃんの証言とも一致します。刺した瞬間の事を詳しく教えていただけますか」
「そうですね。心臓を一突きでした。両手で腹の前に構えて、勢いをつけて体当たりしたわけですな。ここだけの話ですが殺意があったと捉えられても無理はありません」
「この刃物はどこにいけば手に入りますか」
「どこの商店でも手に入ります。ありふれた安物のナイフですよ。触ってみますか」
木製の持ち手が付いた、手の平サイズのありふれた果物ナイフだった。
どうも、とナイフが手渡される瞬間に手を滑らせてしまった。
ナイフは刃先からよく磨かれた木製の床に落ちてしまった。
「失礼しました。手が滑ってしまいました」
「いいえ。執行人殿のお連れ様にお怪我がなくてなによりでございます。同時に歴史ある我が町の議事堂に傷がつかなくてね」
丁寧な言葉とは裏腹に軽蔑のまなざしを向けられた。
私は、マイを連れてすごすごと引き下がった。
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