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おーい、という元気そうな声が聞こえて私は声のほうに目をやった。
「やっぱりカッシーと執行人さんだ。二人も最後の興業を見に来たの?」
「ふん、金を払ってまで見る価値があるのか?」
「まあいいじゃない。アメリーちゃんは何度も見に来てるの?」
「うん! 猿の綱渡りを見るのが楽しくてあとね、お馬さんや豚さんも賢くていろんな芸をするの」
「へえ、色んな動物がいるのね。あっ! アメリーちゃん、今入り口から出ていくあの男の人は誰だか分かるかな」
「クラウスのお父さんよ。でも変ね。この間も催しが始まる前に入って、すぐに不機嫌そうな顔で出て行ったのを見たの。でね、こっそり後を尾けてみると声が大きくて偉そうな座長さんに、山ほどの銀貨を渡していたわ」
「その事他の誰かに話した?」
「ううん。今の今まで忘れていたわ。そうそう。ついでに思いだしたんだけど、バルバラが話そうとしていた内緒話のこと。確か最初に、ビルギットから聞いたんだけどって言ってたわ」
「ちょっと待ってアメリーちゃん。つまりバルバラちゃんは何が起こったかを見たわけじゃないの?」
「そうよ。ビルギットの話を私にもこっそり教えてくれようとしたの。そろそろ見に行くねっ」
ありがとうと言い終わらないうちに、少女は天幕目がけて弾丸のように駆けて行った。
「どういうことだ。鍛冶屋の主人がどうしていけすかないヘボ座長に金銭を渡す必要がある」
「たった今全てを説明することもできるけど、もっとふさわしい舞台が必要みたいね」
「全てを説明だと? それはどういう――」
「マイ、明日の朝一番で王立議員達を集めてくれるかな。大長老が戻って来るまでに大事な話があるの」
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