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最終日の早朝。
議事堂には、寝ぼけ眼の王立議員達が集合していた。
執行人の頼みとはいえ、やはり見知らぬ小娘一人のために鶏と同じくらい早起きさせられて、良い気分でいられるはずはない。
「まずは無理を言いまして、早朝からお越しいただいた非礼をお許しください。しかしこれは一人の少女の命、ならびに街の名誉を左右する重大な案件なのです」
「しかしですなお譲さん。私はビルギットがバルバラを刺し殺す場面にでくわしたのですぞ。よもや誉れ高い議員職である私の誠実性を疑うのではありますまいな」
「殺傷の瞬間については後からご説明いたします。まずは順を追って説明していきますのでしばしのご静聴を願います」
ぶつぶつ言う目撃者の男が不服そうに押し黙る。
集合した全員の食い入るような好奇と軽蔑の視線。
それらを一身に受けていることがひしひしと感じられた。
「私と執行人は昨日、バルバラの父親であるクラウス座長と話しをしました。思えばクラウスには奇妙な点がいくつかありました。
一つ。娘さんが亡くなったばかりだというのに、ずいぶんと余裕な様子でした。一人娘を亡くした父親の心境にしてはあまりに不自然ですよね。
二つ。彼は部下に命して街で宝石類を買い集めさせていました。しかしここでも多々おかしな点が見受けられました。宝石が小さすぎるのです」
「旅では持ち運びやすい物を選ぶのは当たり前ではないのか」
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