第一夜 子どもたちが屠殺ごっこをした話

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 ほうほうの体でマイの家に戻ってきた。  どこからか物音はするが姿が見えない。  不思議に思い耳を澄ませてみると、床下から沸騰したやかんから勢いよく噴き出る蒸気か、蛇が威嚇のために発するシューッシューッという警告音らしき音が聞こえてくるではないか。  暖炉の傍でくつろいでいると、床の一部が持ち上がり深緋色のローブが姿を現した。  私とビルギットを射抜くような視線で交互に見る。  気落ちした雰囲気が伝わったのか。  マイは底意地の悪そうな笑みを浮かべた。 「戦果が上々な様で何よりだな。ところで飯をめぐんでやったんだ。下に降りて道具の手入れの一つも手伝ったらどうだ」 「どういたしまして。こんな怪しげな地下室なんか誰に頼まれたって入るものですか」 「おやおや。一飯の恩義を忘れるとはカッシーは犬畜生以下だな」  にやりと嫌らしい笑みを浮かべたマイ。 なんと視線の先にはあろうことか十歳ほどの少女が。 怪しげな地下室から不安げな顔を出しているではないか。 「アメリーちゃん。どうしてここに?」 ビルギットの反応から見てどうやら友達の一人らしかった。 「被疑者の少女が心配になり議事堂からお前達を尾けてきたところ、ここに辿り着いたんだと。家の近くをうろつかれては邪魔だから引きずり込んでやった。なんでも伝えたいことがあるとか」  アメリーの着衣や肌に乱れや傷は見当たらない。 幸いにもマイは危害を加えるつもりは無かったのだと判断することにした。 「実は事件の数日前、バルバラちゃんが面白い話しがあるって自慢してきたの。でも時間が遅いし、いろいろあったからまた今度教えてあげるって。あの日はそのまま別れちゃった」 「もしかしてドミニク君のお父さんの仕事場でかくれんぼをした時じゃない?」 「えっ。どうしてあなたがそれを?」  やっぱり。  そんなことじゃないかと思った。  私の直感が正しいならば。  もしかすると、ビルギットを助けることができるかもしれない。
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