1999年(平成11年)10月

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撮影も大詰めに迫ってきた。 およそ1年に及ぶ撮影で、美枝子と真実のシーンも残り僅かとなっていた。 そんなある日、都内の撮影所で、美枝子は監督の黒岩に声をかけられた。 「美枝ちゃん、どうだい、たまには食事でも。出来れば今夜、一対一(サシ)で話したいんだが…」 美枝子は真実にこの事を伝え、先に帰って食事を済ませておくよう、言った。冷蔵庫に、昨日の残りがあるー。 「わかりました」 真実は答えたが、一抹の不安がよぎった。もう撮影終了間近のこの時期に、監督がいったい、何の用だろうかー。 美枝子には毎晩、遅くとも10時には寝るように言われているが、真実はまんじりともせず、ただひたすら、美枝子の帰りを待った。 美枝子の帰宅は、夜中の12時を過ぎていたー。 「お帰りなさい!」 真実は玄関に走る。 「あら、あなた、まだ起きてたの?」 美枝子の顔が、少し赤みを帯びている。 「お酒、飲んできたんですか?」 美枝子は家では、一切酒は飲まないー。 「ええ、少しだけね。監督がどうしても付き合え、っていうものだから…。お風呂入ろうかしら。沸いてる?」 1時間後、浴室から出てきた美枝子に、真実は尋ねたー。 「何の話だったんですか?監督…」 これを聞くために、ずっと待っていたのだ。 自分を心配してくれる、真実の思いを、美枝子は察した。 明日の晩にでも話そうと思っていたが、今話すしかないかー。美枝子は思った。 しかし、この()はまだ中学生だ。言い方を間違えると、女優を辞める、などと言いかねない。 美枝子は少し、思案したが、やめた。真実なら大丈夫だ。包み隠さず、すべてを、ありのまま話そうー。 「真実さん、これからわたくしが話す事、しっかり聞いてね」 真実はコクリと頷く。 美枝子は少し微笑んで、言ったー。 「監督からね、ヌードを撮らせてくれないか、って言われたの。わたくしのー」
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