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「ええか?必ず来るんやで。ほなな━」
修助は一人、自分の楽屋へ向かった━。
なんだろう……。
麻実は思案する。まさか、いま世間を騒がせている枕営業の強要?!
噂によると、修助はテレビタレントとして絶頂であった15年ほど前、当時10代だった女性モデルに肉体関係、いわゆる"枕営業"を迫ったという。
オレと一夜を共にすれば、番組のレギュラーにしてやるで、と━。
現在は30半ばになっているそのモデルが一昨日、修助の芸能界復帰に合わせるようにSNS上でそのことを暴露したのである。
なお、実際に"枕営業"があったのかどうかは、元モデルは明らかにしていない。
そんな報道があったばかりだから、女である自分が修助の楽屋に行くのは、やはり憚られる。しかも、一人で……。
しかし、もし修助が、自分たちが臨む最終決戦に向けて、何かアドバイスをしてくれるつもりだとしたら━。
それは行かなければまずい。しかも修助は、一票持っている。仮に得票が同数だった場合、彼が入れた方が勝ちとなる、審査委員長としての絶大な一票を……。
それに先ほど、本番中に粗大に対して見せた、怖い表情━。機嫌を損ねさせたら、大変だ。
「どうするの?麻実ちゃん…。行くの?」
かなえが不安げに聞いてきた。
「うん、ちょっと行ってくるわ」
修助がかつて肉体関係を迫ったとされるのは、当時10代の美人モデルだ。自分は32の女芸人。
まあ、その中では平均点以上の容姿だとは思うが、面食いと言われる修助が、自分なんかをどうにかしようなんて思ってはいまい。
「え━、でも一人じゃ危険だよ。やっぱりアタシも行くよ…」
かなえは泣き出しそうだ。
「大丈夫よ。何かされそうになったら、大声出して騒いで逃げてくるから。アンタは先に戻ってて━」
麻実は一人、修助の楽屋へ向かった。
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