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そして【島尾修助様】と書かれた貼り紙のある楽屋まで行き、ドアをノックする。
「3時のプリンセスの福田です」
「おう、入り~」
中から修助の声が━。
「失礼致します」
扉を開け、麻実は頭を下げながら中に入る。
広い。自分たちの倍以上ありそうな楽屋だ。
そして自分たちの部屋にはないリクライニングチェアに、修助はふんぞり返っていた。
さらに部屋の中には、もう一人の人物が━。
「よー、麻実ちゃん。久しぶり~」
あっ、あなたは━。
人気タレントの手川悦朗であった。
「おはようございます!」
麻実はあわてて挨拶する。手川は白の紋付き袴姿だ。
一度、あるバラエティー番組で共演したことがあるが、なぜ手川がここに?
『笑王戦』には、出演しないはずである。
そんな麻実の疑問を察したのか、手川は言った。
「修助さんの復帰でしょ。お祝いの挨拶に、飛んで来たのよ」
楽屋内には、様々な芸能人やスポンサーから贈られた祝いの花が、所狭しと飾られている。
「コイツな、紅白のスタジオ、抜けてきてくれたねん。律儀やろ?」
修助が言った。
そうだ。手川は裏の紅白歌合戦に「白組応援団」として出演しているのだ。それで、こんな格好を……。
「いやいや、オレの出番はもうほとんど終わりで、あとはエンディングにちょこっと顔出すだけですから」
それでもNHKのある渋谷から、この虎ノ門まで駆けつけて来たのである。
こうした"気遣い"が、手川が芸能界で成功している秘訣とも言える。
「手川━」
「はいっ!」
「素敵やん」
「ありがとうございます!」
「マミ━」
……え、アタシ?
「は、はい」
「そんなトコ突っ立ってないで、座り」
ふんぞり返ったまま、修助が言った。
「あ、はい。失礼します」
麻実は手川の隣の椅子に腰かけた。
手川さんがいてくれて良かった…。麻実は思う。修助と二人きりは、やはりキツイ状況だ。
「マミ━」
修助が再び、声をかける。
「はい」
「優勝したいか?」
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