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「あ、はい…。優勝したいです」
困惑しながらも、麻実は答えた。当たり前でしょ━。
「さっきのネタ、よかったで。アッハーンてやつ」
リクライニングの背もたれをを起こしながら、修助は言った。
「ありがとうございます!」
麻実は頭を下げる。
そんな麻実を、ジロリと見つめる。物色するような目つき……。
「ネタはお前が書いてるんやろ?裏のモニター見てたんやが、ホンマによかった」
修助は松友と共に出番待ちで、3プリのネタ中、審査員席にはいなかったのである。
「可愛いかったで、お前」
え……?
「オレ、すっかりお前のファンになってしまったわ」
「……ありがとうございます」
「でも一ヵ所、トチったやろ。セリフ飛ばしたな?」
やはり、見抜かれていた……。
「アカンやろ。自分で書いたセリフ飛ばしては━」
「はい。すみません…」
「まあ、相方のアドリブに救われたな。客や視聴者にはバレてないやろ━。でも、オレらプロの審査員の目はゴマかせんで」
「はい……」
「それで松友に言って、オレらのネタ、早々に切り上げたねん。お前らを…、いや、お前を勝たせてあげたかったから━」
え……?!
「あのままオレらが普通にネタやってたら、お前ら負けてたで…。わかってほしいんや、オレの気持ち━。お前を勝たしてあげたい。最終決戦でも」
「……」
「赤坂プリンセス、最上階のスイートや。番組が終わったら、来てほしい…」
……!
「来るって約束してくれるなら、お前らが勝てるよう、審査員に根回ししといたる」
「根回しって……」
「お前らに票を入れるよう頼んでやる、ってことや。まず松友━。アイツはオレの頼みは何でも聞いてくれる。これで1票。それと、巨神と下沼━。実はオレ、アイツらにカネ貸しとんねん。無利子、無期限で━。よってオレの言いなりや。はい、これで3票。それにオレの1票で計4票、過半数━。あとの3人が誰に入れても、優勝はお前らや」
最終決戦は視聴者と客席の投票はない。審査員の投票だけで、勝敗が決まる━。
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