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修助の、枕営業の強要━。
噂は本当だった……。
しかしどうして、自分なんかに?
麻実の容姿は極めて普通。取り立ててスタイルがいい訳でもない。
しかし麻実、実は若手の男性芸人仲間から誘われることが、これまでに何度かあった。
電話番号を聞かれたり、飲みに誘われたり、あるいは単刀直入に「付き合ってくれ」と言われたり━。
真面目な麻実である。もちろんすべて断ってきたが、あまりにも不思議に思い、一度聞いてみたことがある。
「どうして、アタシなん?」
他にもたくさんいるでしょう?
すると、こういう事であった。
麻実がテレビに出たり舞台に立つ時、当然ながら両脇にはトリオである、ゆのっちとかなえがいる。
100kgに迫る、あるいは超えている、大きな体の二人が━。
そうした二人に挟まれていると、どうやら自分は実際以上に可愛らしく、可憐に見えるらしいのだ。
「一人だと、全然たいしたことねえな、お前」
誘いを断った相手に、その後そんな失礼なことを言われたこともある。
福田麻実があの二人を誘ってトリオを組んだのは、自分を良く見せるのが狙いだったんじゃね?、などというネットの書き込みもあったくらいだ。
もちろん事実無根、悪意に満ちた誹謗中傷に過ぎない。
いずれにしても、本人の意思にかかわらず麻実が男にモテてしまうというのは、事実であった。
しかしまさか、この島尾修助の目に止まってしまうとは……。
「お、もう時間か。スタジオに戻らなあかん」
修助が立ち上がる。3時のプリンセスのネタ順は3番目のため、麻実の出番はまだ先だ。
思えば修助が3プリを3番目にしたのも、麻実に恩を売るための下心からに違いない。
「ほな、いい返事聞かせてや。先に行っとるで━。手川、今日はありがとな。お前もNHKに戻るまで、ゆっくりしていき」
「はいっ!ありがとうございます!」
手川に見送られ、修助は楽屋を後にした。
茫然とする麻実を残して……。
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