2021年(令和3年)12月

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続けて麻実は、電話をかけてみる━。 ダメだ。コールはするが、何度鳴らしてもかなえは出ない。 現在の時刻、9時40分。修助の楽屋で10分以上捕まっていたから、ただでさえ時間は押している。 自分たちの出番は、おそらく10時10分くらい。 まずい。早くネタ合わせしないと、本当に間に合わなくなる……。 麻実はマネージャーと連絡を取る━。 「ねえ、かなえが戻って来なくて、連絡も取れないんやけど…。どこ行ったか、知らん?」 マネージャーは大学を出て押本に入社2年目の、志村絵里(しむらえり)という女だ。もちろん3プリだけでなく、他にも5、6組の若手芸人を担当している。 『え、さっき中庭に行くって言って出て行きましたけど』 この局には社屋の合間にわりと広い中庭があり、出番待ちのタレントやスタッフが外の空気を吸いに出たり、喫煙スペースでタバコを吸ったりしている。 「それいつ頃?」 『えーと、30分くらい前でしたかね』 自分が楽屋に戻る、ほんの少し前だ。 「わかった。ちょっと見に行ってみる」 『えー、でも待ってれば、そのうち戻って来るんじゃないですか━?』 何を悠長なことを…。 この女には今朝からゆのっちを探させているが、本当にちゃんと探してくれているのだろうか……。 麻実は電話を切り、楽屋を飛び出した。
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