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続けて麻実は、電話をかけてみる━。
ダメだ。コールはするが、何度鳴らしてもかなえは出ない。
現在の時刻、9時40分。修助の楽屋で10分以上捕まっていたから、ただでさえ時間は押している。
自分たちの出番は、おそらく10時10分くらい。
まずい。早くネタ合わせしないと、本当に間に合わなくなる……。
麻実はマネージャーと連絡を取る━。
「ねえ、かなえが戻って来なくて、連絡も取れないんやけど…。どこ行ったか、知らん?」
マネージャーは大学を出て押本に入社2年目の、志村絵里という女だ。もちろん3プリだけでなく、他にも5、6組の若手芸人を担当している。
『え、さっき中庭に行くって言って出て行きましたけど』
この局には社屋の合間にわりと広い中庭があり、出番待ちのタレントやスタッフが外の空気を吸いに出たり、喫煙スペースでタバコを吸ったりしている。
「それいつ頃?」
『えーと、30分くらい前でしたかね』
自分が楽屋に戻る、ほんの少し前だ。
「わかった。ちょっと見に行ってみる」
『えー、でも待ってれば、そのうち戻って来るんじゃないですか━?』
何を悠長なことを…。
この女には今朝からゆのっちを探させているが、本当にちゃんと探してくれているのだろうか……。
麻実は電話を切り、楽屋を飛び出した。
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