1991年(平成3年)9月

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この年のプロテスト受験者は、真須美を含め20名。皆、女子プロレスに憧れて全国から集まり、オーディションに合格した15才から19才までの少女、女性である。 しかし最終関門であるこのプロテストに合格しなければ、念願のレスラーにはなれない。 「おら━ッ、てめえら全員並べ!」 竹刀を手に、トレーナーである先輩レスラーが練習場に入ってきた。全部で5人━。 このトレーナーは、候補生より2~5年ほどの先輩が務める。そしてメイントレーナーが入団3年目の、宇根(うね)昌子(まさこ)という女であった。 この時19才━。 「これからプロテストまでの3ヶ月、アタシたちがお前らの指導をする。先輩には絶対服従だ。いいな?!」 それほど大きな女ではない。しかしその圧倒的な迫力に、候補生たちは震え上がり、声も出ない。 その時であった。 バシッ━━! 昌子の脇にいる別のトレーナーが、床を竹刀で叩きながら怒声を上げた。山脇(やまわき)美月(みづき)という、5年目の選手━。 「返事は?!」 「はいッ!」 候補生たちは直立不動で応える。 「返事、挨拶の出来ないヤツは、竹刀で容赦なくぶっ叩いていくからな。そのつもりでいろ」 各自、思い思いのジャージ、トレーニングウェア姿の候補生を見回して、昌子が言った。 ちなみにトレーナーたちは全員、新女公式の赤いジャージ姿である。 「よーし、じゃあ全員、これに着替えろ」 何やら紺色の布切れが、候補生たちに配られた。 何だろう……? 真須美はそれを広げてみる。 これは━━。 スクール水着であった。
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