2020年(令和2年)7月

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2018年3月末日、東京ー。 花薫る桜田門の庁舎は、その穏やかな陽気とは正反対の、物々しい空気に包まれている。 見渡す限り、紺の制服、制服、制服…。 それを(まと)った、精悍な面構えの男たち。 その構成は青年から壮年まで様々であるが、今日は圧倒的に青年が多い。不安と覚悟の織り混ざった、初々しい表情である。 首都・東京の治安を守る警視庁の、今日は新卒採用者の入庁式であった。 警視総監訓話ー。 「2年後のオリンピック開幕を控え、今後ますます各国要人の訪問が多くなり、東京はテロリストたちの格好の標的となる。国際社会及び都民・国民からの要請に基づき、東京の治安を脅かす者を、我々は徹底的に排除・根絶する」 壇上から総監は、新入庁者たちを見渡す。 その片隅に、20名ほどの女性、というよりも少女の一団が着席し、自分の話に耳を傾けているのを、総監は認めた。 「我々が排除・根絶すべき相手はテロリスト、つまり人間だけとは限らないー。その対象の一つに超常生物、いわゆる『化け物』が挙げられる。この人喰い化け物の駆除・捕殺は、我々警視庁に課せられた、喫緊の課題である。いかなる手段を講じてでも、2020年7月、オリンピック開幕までに化け物を確保せよ!」 これまで、いいように化け物にやられてきた警察の、威信をかけた宣戦布告であったー。
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