1578年(天正6年)旧暦3月

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長く続いた戦国の世も、一人の男の登場により、遂にその幕を閉じようとしていた。 織田信長。 尾張の一大名に過ぎなかったこの男が、近隣諸国の大名を次々と撃破し、足利義昭を奉じて上洛したのが10年前。今ではその義昭を追放し、京に君臨している。まさに、向かうところ敵なしであった。 その信長が唯一、畏敬の念を抱き、自分より強いと認める武将がいた。 信長は、その武将に絵を贈り、鷹を贈り、銘刀を贈るなどして、もう何年も前から機嫌を取っている。 戦いたくない。戦ったら負ける。 そう思っていた信長に、一つの転機が訪れる。 この武将に侵攻された隣国の大名が、信長に救援を要請してきたのだ。 いかに畏敬の念を抱いているとはいえ、天下布武を掲げる自分が、いつまでもあの武将を避けている訳にもいかぬ。 しかも、此度は人に請われての事である。出兵の大義名分としては、申し分ない。 信長は、武将との決戦に臨む決意を固めた。
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