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あの一家は、平家の落人ー。
村人の間に、そんな噂がまことしやかに流れた。
貧農の姿に身をやつしても、高貴な血筋は隠せるものではない。おそらく、間違いない…。
平家の者を匿えば、村全体に重い処罰が与えられる。村人全員、打ち首という事になるだろう。
逆に殺してその首を役人に届け出れば、多大な恩賞にありつける。
村人たちは相談の上、一家を皆殺しにする事とした。
そして祭りの晩、その恐ろしい計画は実行される。
寺の境内で宴が開かれた。酒が振る舞われ、多くの者が、件の一家の主に酌をする。
村人たちの厚意に主は何の疑いも持たず、勧められるままに飲んだ。そして気持ちよく酩酊してきた頃ー。
突如村人たちは主に襲いかかり、無数の竹槍を突き刺した。
不意を突かれ、主は何の抵抗も出来ず、その場に倒れた。口から大量の血を吹き出して…。
村人たちはその足で、妻と子のいる家に向かう。
まずは玄関先に出てきた妻の頭に鎌を突き立て、殺害。
そのまま中に踏み込み、果敢に立ち向かってきた年端もゆかぬ息子を、鍬と鋤をもって数名で殴り殺す。
残るは16才になる、美しい娘ー。
逃げまどう娘を捕まえる。計画通り、すぐには殺さない。
村人たちは代わる代わる、娘を犯し始める。
そして、最後の男が射精して果てると、首を絞めて殺害した。
その時である。
真っ暗な玄関先に、誰かが立っていた。
血にまみれ、体中に無数の竹槍を突き立てたままの、この家の主であった。
まだ絶命しておらず、家族を守るため、寺から執念でたどり着いたのであろう。
しかしそれもむなしく、妻子はすでに殺されていた。娘に至っては、男たちの慰みものにまでされて…。
髷が切れ、ザンバラとなった姿は、まさに落武者である。
口から血を流し、幽霊のような顔で、言ったー。
「おのれら、よくも…。祟ってやる…。末代まで、祟ってやるぞ…!」
村人たちは、恐怖におののく。しかしー。
「やっ、やかましいーッ!」
一人の男が、斧でザンバラ頭を叩き割った。
こうして村人は、この一家を皆殺しにした。
思った通り、一家の主は平七十郎清長という平家一門の武士で、村人たちは莫大な恩賞を手にしたのである。
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