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舞台裏の異様な気配を感じ取ったオザハルは、一人歌うのをやめ、我先にステージ前方に駆け出した。故意か偶然か、夏帆を後ろから突き飛ばしてー。
次の瞬間、メンバーの背後のステージセットが、轟音をたてて前方に倒れた。
「ドッスーン!!」
「えっ、なに?何なのー?」
慌てふためく選抜メンバー30人。幸い、誰も下敷きにはなっていない。しかしー。
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
そこから、巨大なハゲ頭の男が顔を覗かせていた。
そして、UND最大ヒット曲『アンビリーバブル(信じらんない)』の軽快なリズムが鳴り響く中、化け物がステージに乱入する。首から下は、言わずと知れた大蛇である。
逃げまどうメンバーたち。何しろ、このステージにいる全員が、化け物の捕食対象である「処女」なのだ。
真っ先に逃げ出したオザハルは、すでにステージから5m下の客席に向かうハシゴを下りている。
最初は何か手の込んだ演出と思っていた観客も、この時点ではさすがに異常事態に気付き、ざわめき始めた。
そういえばこの化け物、最初は一般メンバーのいる控え室を襲ったはずなのに、誰一人喰った形跡がない。
さらにこのステージ上でも、目の前に獲物はたくさんいるのに、なぜか喰おうとしない。それどころか、見向きもしていない。
明らかに多数の中から、限られた数少ない獲物を探している動きであった。
そして化け物は、遂に獲物を見つけたようだ。
その視線の先に、水島夏帆と滝沢優奈がいたー。
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