2013年(平成25年)6月

11/28
前へ
/1815ページ
次へ
舞台裏の異様な気配を感じ取ったオザハルは、一人歌うのをやめ、我先にステージ前方に駆け出した。故意か偶然か、夏帆を後ろから突き飛ばしてー。 次の瞬間、メンバーの背後のステージセットが、轟音をたてて前方に倒れた。 「ドッスーン!!」 「えっ、なに?何なのー?」 慌てふためく選抜メンバー30人。幸い、誰も下敷きにはなっていない。しかしー。 「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」 そこから、巨大なハゲ頭の男が顔を覗かせていた。 そして、UND最大ヒット曲『アンビリーバブル(信じらんない)』の軽快なリズムが鳴り響く中、化け物がステージに乱入する。首から下は、言わずと知れた大蛇である。 逃げまどうメンバーたち。何しろ、このステージにいる全員が、化け物の捕食対象である「処女」なのだ。 真っ先に逃げ出したオザハルは、すでにステージから5m下の客席に向かうハシゴを下りている。 最初は何か手の込んだ演出と思っていた観客も、この時点ではさすがに異常事態に気付き、ざわめき始めた。 そういえばこの化け物、最初は一般メンバーのいる控え室を襲ったはずなのに、誰一人喰った形跡がない。 さらにこのステージ上でも、目の前に獲物はたくさんいるのに、なぜか喰おうとしない。それどころか、見向きもしていない。 明らかに多数の中から、限られた数少ない獲物を探している動きであった。 そして化け物は、遂に獲物を見つけたようだ。 その視線の先に、水島夏帆と滝沢優奈がいたー。
/1815ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加