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きっかけは、観客の一人がつぶやいた、こんな言葉だった。
「ってことはUNDって、あの二人以外全員、処女じゃなかったんじゃね?」
これを隣にいる観客が聞き、同じ言葉をつぶやく。
「ってことはUNDって、あの二人以外全員、処女じゃなかったんじゃね?」
さらに隣の者が聞き、同じ言葉をつぶやくー。
言葉は瞬く間に伝播していく。そして、無事だったメンバーがへたり込んでいるステージの前まで伝わった時、それは断罪に変貌した。
「UNDは処女じゃない!」
観客たちは暴徒化し、一斉にステージ前に押し寄せる。
「お前ら、だましてたな!」「処女じゃねえだろう!」「何が『鉄の掟』だ!」「校則違反だぞ!」「いつヤッた?!」「俺にもヤラせろ!」
一人の観客が、ステージに上るハシゴに飛び付く。さらに一人が続く。さらにもう一人、さらに…。
あっという間に100人近い男たちがステージ下に群がり、ハシゴを上っていく。
「おらーっ、ヤラせろ!」
最初にステージに上り着いた男が、一人のメンバーに襲いかかる。
「いやあぁぁっ!」
必死に抵抗するが、男の腕力にはかなわない。あっという間に押し倒され、衣装を剥ぎ取らる。
「お願いします、やめてください」
「うるせーっ、どうせ処女じゃねえんだろ!」
哀願もむなしく、いきり立つ男に突き破られた。
観衆がアイドルを犯すー。こうしたおぞましい状況が、そこかしこで発生していた。
そんな中ー。
「おおい、仲間を置いて真っ先に逃げ出したヤツがいたぞー」
アリーナ席で数人の男に捕らえられた、オザハルであった。
犯されたのであろう、衣装はボロボロにされ、顔が信じられないくらいに腫れ上がり、血まみれであった。何人もの人間に殴られたとみられる。
過ちを犯した者をかさにかかって糾弾し徹底的に痛めつける。
周りがやってるから自分もやる。
いけない事と分かっていても止めずに傍観者となる。
処女を喰らう大蛇と同じくらい、あるいはもっと恐ろしい「群衆心理」という名の化け物が、そこにいたー。
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