2013年(平成25年)6月

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「はッ、かしこまりました!」 高原は思った。夏帆に高値をつけ、温存しておいて良かったとー。 「それと、もう1つお願いがあります」 須田長官は表情も変えずに言った。 「背が高くて、スラッとした娘がいるでしょう。最近入ったー」 「滝沢、でしょうか…」 「そうそう、滝沢さんといいましたかー。彼女も、お願いしたいのですが」 「はあ…」 ここで初めて須田は、薄く笑った。 「おっと、勘違いされては困ります。私が一人で二人を相手にする訳ではありません」 そして、また無表情に戻って、言ったー。 「滝沢さんは、総理にお願いします」 高原は耳を疑った。 「そ、総理にですか?!」 これまで、なりふり構わずに官僚にメンバーを抱かせ、今度は官房長官に斡旋しようとしている高原だったが、さすがに一国の総理大臣に対してそのような事は、思いもしなかった。 「はい。彼女は総理のお好みのタイプです。きっとお喜びになるでしょう」 この口ぶりだと須田はこの件、まだ総理には話していない。 側近中の側近で、総理の政治思想のみならず性的嗜好まで熟知した須田長官の、まさに「忖度(そんたく)」であろう。 滝沢も夏帆同様、官僚どもには出さずに温存しておいて、本当に良かったー。 「ただ1つ、問題があります」 須田は相変わらず無表情だー。 「国会での答弁などでお分かりかと思いますが、総理には少々、子供っぽい所があります。総理大臣たる自分にあてがわれる娘が、須田の所の娘よりランクが下だと知ったら、たとえタイプでもご気分を損ねると思われます。そこで高原さん、今度の選挙とやらで、滝沢さんが1位になるよう、調整をお願いします」 忖度もここまでくると、ある種の恐怖すら覚える。 高原が集計結果を改ざんし、滝沢1位を画策したのは、こうした事情によるものであった。
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