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「はッ、かしこまりました!」
高原は思った。夏帆に高値をつけ、温存しておいて良かったとー。
「それと、もう1つお願いがあります」
須田長官は表情も変えずに言った。
「背が高くて、スラッとした娘がいるでしょう。最近入ったー」
「滝沢、でしょうか…」
「そうそう、滝沢さんといいましたかー。彼女も、お願いしたいのですが」
「はあ…」
ここで初めて須田は、薄く笑った。
「おっと、勘違いされては困ります。私が一人で二人を相手にする訳ではありません」
そして、また無表情に戻って、言ったー。
「滝沢さんは、総理にお願いします」
高原は耳を疑った。
「そ、総理にですか?!」
これまで、なりふり構わずに官僚にメンバーを抱かせ、今度は官房長官に斡旋しようとしている高原だったが、さすがに一国の総理大臣に対してそのような事は、思いもしなかった。
「はい。彼女は総理のお好みのタイプです。きっとお喜びになるでしょう」
この口ぶりだと須田はこの件、まだ総理には話していない。
側近中の側近で、総理の政治思想のみならず性的嗜好まで熟知した須田長官の、まさに「忖度(そんたく)」であろう。
滝沢も夏帆同様、官僚どもには出さずに温存しておいて、本当に良かったー。
「ただ1つ、問題があります」
須田は相変わらず無表情だー。
「国会での答弁などでお分かりかと思いますが、総理には少々、子供っぽい所があります。総理大臣たる自分にあてがわれる娘が、須田の所の娘よりランクが下だと知ったら、たとえタイプでもご気分を損ねると思われます。そこで高原さん、今度の選挙とやらで、滝沢さんが1位になるよう、調整をお願いします」
忖度もここまでくると、ある種の恐怖すら覚える。
高原が集計結果を改ざんし、滝沢1位を画策したのは、こうした事情によるものであった。
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