2013年(平成25年)6月

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翌朝、留置所内の個室で、タオルで首を吊った状態の高原の遺体が発見された。 警視庁は高原が監守の目を盗み、首吊り自殺したと発表した。遺書らしき物は見つかっていないという。 その日の定例会見で、須田官房長官は記者から次のような質問を受けた。 「UNDメンバーの官界への売春ルートはかなり解明されてきましたが、これから明らかになるはずだった政界ルートに関しては、高原容疑者の死亡により、全容の解明が困難となりました。その件についての長官の見解をお伺いします」 須田長官は、個別の案件に対するコメントは差し控える、と前置きした上で、こう述べた。 「留置所での容疑者自殺という事態を受け、再発防止に努めるよう、関係各署に指示致しました。また、本件児童売春防止法違反事案に関しましては国民の関心も高く、容疑者は死亡しましたが、今後の捜査状況を見守って参りたいと思いますー」 東京ドームでの惨事から1ヶ月、オザハルはようやく退院し、両親のいる福岡の自宅へ戻った。 複数の人間に暴行されたという精神的ダメージが大きく、3日に一度、カウンセリングを受けているが、身体のダメージの方は、ほぼ回復した。 UNDは事実上、解散した。メンバーの誰とも連絡は取っていない。 そんな折、高原の自殺を知った。留置所で首を吊ったという。 しかし、オザハルは懐疑的だった。あの男が、自殺などするようなタマかー。 オザハルは報道の内容を見ようと、自身のスマホを手に取る。事件以来、1ヶ月ぶりだ。 ニュースサイトを見る前に、溜まっているLINEメールを開いた。UNDのメンバーや地元の友達からのお見舞いメールが、何十件も未読になっている。 そして、『高原和哉』からもメールが来ていたー。
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