2013年(平成25年)6月

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着信日およびその時刻から、高原は逮捕される前夜に、このメールを送っていた。 ものすごい長文である。その冒頭に、こう書かれていたー。 『小沢ちゃんへ』 またか。オザハルはため息をついた。テレビ局の小沢プロデューサーに送ったつもりのメールだ。 どうやら高原はスマホの電話帳の名前の登録を、初期のガラケーからの名残で、いまだにカタカナでしていたらしい。 たしか、小沢の下の名前は「春樹」だ。 オザワハルキとオザキハルカ。これでは高原ならずとも、間違えるだろうー。 『どうやら俺は、明日逮捕されるらしい。俺はメンバーに売春をさせていた。警察で、洗いざらい喋るつもりだが、俺が全部喋ると、困る人間が出てくる。それは政界の大物で、たぶん、俺はただでは済まない。下手をすれば、殺されるだろう。小沢ちゃん、考えてみると、俺には友達と言える人間は、アンタしかいない。殺される前に、俺のした事、すべてアンタに伝えようと思う』 そこには、初めてメンバーに官僚相手に売春をさせた経緯から、大学開設への思い、それを実現させるために売春の斡旋をさらに重ね、最終的に須田官房長官にたどり着いた事が綿々と綴られていたー。 オザハルは、画面に食い入る。 『クラブ活動』はすべて高原から、いついつの何時に、どこそこのホテルへ行け、と指示された。これはお前たちが卒業後も芸能界で生きていくために必要な事なんだと言われていた。 オザハルは2年間で計5回、高原に行くよう指示され、うち2回はすっぽかしている。 相手はすべて同じ男で、受け取った金額は1回につき50万、計150万円であったー。 『6月の初めに須田長官に会った時、密かに会話を録音した。後になって大学開設を渋られた時、脅す材料になると思ったから。今そのボイスレコーダーが手元にある。逮捕されて押収されたら、間違いなく揉み消されるだろう。これを今から、福岡の実家の母親に送る。俺に何かあったら、母親から受け取って、内容を世間に公表してほしい』
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