2013年(平成25年)6月

25/28
前へ
/1815ページ
次へ
翌日、オザハルは父親の運転で、メールに書かれていた住所の高原の実家へ向かった。同じ福岡市内で、オザハルの実家から車でわずか30分ほどの距離である。高原と自分が同郷だったとは、知らなかったー。 車中、オザハルはずっと、高原の事を考えている。あの人は、自分に何を期待していたのだろうか。 昨日の電話の、小沢の言葉を思い出すー。 「高原ちゃんはホント、オザハルちゃんの事を買ってたよ。尾崎には卒業後も、OG会長としてグループにかかわってもらうって。で、ゆくゆくはグループのプロデュースもキミに任せるつもりだったみたいだね」 オザハルはふと、生徒会選挙開始2時間前の、高原の間違いメールを思い出した。小沢に宛てて、最終の集計で夏帆が逆転したが、打ち合わせどおり滝沢の勝ちでいく、というあのメールだ。自分はあれを見て、高原の部屋に乗り込んでいったのだー。 オザハルが尋ねると、小沢は、やや語気を強めて言ったー。 「はあ?そんな事、あるワケないでしょ!あの選挙は、ガチだから面白いんだぜ?そんな打ち合わせ、俺は高原ちゃんと、してないよ」 やはりー。あれも、「間違いメール」ではなかった。高原が、自分に知らせてきたのだ。 そしてたぶん、彼は止めてほしかったのだろう。そんな不正をしてはいけない、と…。 オザハルの頬を、涙がつたう。 そんな彼に、自分は、卒業後に便宜をはかれ、歌姫にしろ、などという馬鹿な事を言ってしまった…。 「もうすぐ着くぞ」 後部座席のオザハルに、父親が言ったー。
/1815ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加