2013年(平成25年)6月

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車は住宅街の中の、小ぢんまりとしているが手入れのよく行き届いた、木造平屋建ての家屋の前に停まった。 オザハルは父を残し、『高原』の表札のある玄関へ向かう。 呼び鈴を鳴らすと、白髪で和服姿の、品の良い老婦人が出てきた。一目で高原の母親と分かるほど、似ている。 オザハルが挨拶をする前に、母親は話しかけてきた。 「尾崎遥香さんですね?和哉から聞いております。どうぞ、お入りください」 母親からボイスレコーダーを受け取ると、オザハルはその足で福岡空港へ向かい、東京へ飛んだ。 そこで、小沢の学生時代からの親友という、大手新聞社の政治記者と会い、須田官房長官と高原の会話を聞かせた。 「これは…」 記者の顔色が変わる。そして、興奮して言ったー。 「尾崎さん、これは紛れもなく、須田長官が高原氏に児童売春の斡旋を強要している、とんでもない音声テープです。これが世に出れば、今の政権は吹っ飛びます。それほど影響力のある代物ですが、公表してよろしいですか?」 オザハルは目を閉じ、心の中で問う。 高原さん、いいですかー? 高原が、頷いた気がしたー。 「はい、お願いします…。あの、高原さんは自殺ではなく、やはり殺されたんでしょうか…」 「その可能性は、非常に高いと思います。聞けば高原氏は、警察の取り調べに対し、積極的に供述していたといいます。これに危機感を覚えた長官サイドが、自殺に見せかけて、高原氏を殺害した。無論、警察内部に協力者がいるのは、間違いないでしょう」
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