2013年(平成25年)6月

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高原の死の真相は、いまだに藪の中である。しかしオザハルは、最近になって、やはりあれは自殺だったのではないかと考えるようになった。 高原は、自分たちが思っていたほど、タフな人間ではなかった。むしろ神経質で気の小さい、繊細なタイプの男だったのである。 そして彼は、最後にようやく気づいたのではないだろうか。処女を集めて作ったアイドルグループで金儲けをし、その処女に体を売らせて大学を作ろうとした、あまりにも女性の「性」というものを身勝手に道具のように扱い、その尊厳を傷つけた自らの罪の大きさに。彼は自らの死をもって、それを謝罪したのだ。 高原があのボイスレコーダーを託したのは、決して須田らを陥れるためではなく、自分の罪深さを世の中に知らしめるためだったのではなかろうか…。 しかし、である。オザハルは、敢えて死者に鞭打つ事を言うー。 それなら、生きて謝罪しろ。一生その罪を背負って、生きてゆけ。 あの化け物に襲われた人々の状況を、昔の人はこう表したという。 喰われるも地獄、喰われぬも地獄。 どちらも地獄なら、自分は喰われない方の地獄を選ぶ。夏帆や滝沢には悪いが、喰われたら、そこでおしまいだ。 私は、生きてゆく。生き恥を晒してもー。 オザハルを乗せた機体は、ニューヨークへ飛び立った。 化け物の消息は、ようとして知れない。
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