248年 9月

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「おそらく、今宵だな」 役人の1人がつぶやいた。 女王の館の前に広がる草原の中央に1本の大木があり、そこに5人の女がくくりつけられている。 月明かりに照らされているその女たち、よく見れば、年の頃はどれも10代半ばの少女である。 泣き叫ぶ者、泣き疲れてぐったりしている者、諦めの笑みを浮かべる者、恐怖心が限界を超え狂人と化している者、目を閉じ天に祈りを捧げる者ー。 表情はまちまちだが、この後に待ち受ける運命は、5人一緒である。 それから、半時(1時間)ほど経ってー。 「来た…!」 先ほどの役人が、茂みの中で低い叫びをあげる。 向かいの叢(くさむら)から、巨大なハゲ頭の男が顔を出した。 そして、体をくねらせながら這い出てくる。首から下は妖しく光る、大蛇である。 草の上をのそのそと這い、ゆっくりと大木の下の女たちのもとへ進む。彼女らは、この化け物に差し出された、生け贄であったー。 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 女たちが泣き叫ぶ。声も出せず、恐怖のあまり失禁する者もいる。 化け物は、獲物を縛っている綱の結び目を器用に噛み切ると、まず一息に3人を飲み込んだ。 続けて、逃げようとする残り2人を捕らえ、同時に腰の辺りまで飲み込む。 「あっ…!あぁぁぁぁぁぁぁ!」 1人は気絶しているが、もう1人は絶頂に達したようだ。 その時ー! 木の上に身を潜めていた若い男が1人、化け物の巨大な頭めがけ、音もなく飛び下りた。
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