2013年(平成25年)7月

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弘崎(ひろさき)優香里(ゆかり)は都内の(あかね)保育園に勤務する、2年目の保育士である。 短大の保育科を卒業し、保育士の資格を得た。現在、二十歳(はたち)━。 保育士は、「子どもの保育」と「保護者に対して保育に関する指導」を行うことができる国家資格である。 保育士の仕事とは、就労や療養などの事情で保育を行えない保護者に代わり、保育施設で0才から6才までの乳幼児の保育を行うことだ。 保育士は、乳幼児期という子どもの人間形成に非常に大事な時期に、一日の多くの時間をともに過ごす。 したがって子どもにとって保育士は、保護者と同じように信頼できる存在でなければならない。 保護者に代わって、おむつ交換・排せつの介助や着替え、適切な水分補給を行うこと、食事やおやつを決まった時間に適切な量提供すること、昼寝や休息の時間を適切にとって生活リズムをつくること、体調の変化や気持ちの状態を把握して適切に対応することなどは、保育士の基本的な役割である。 それに加えて、年齢や発達の段階に応じ、コミュニケーション能力、命や自然への関心、自主性、協調性など、子どもたちがさまざまなことを身につけるのをサポートする。 保護者に対しても、保育のプロフェッショナルとして、子どもの発達や育児の悩みなどの相談に対応する。 保育士は今、多くの人材が求められている職種のひとつだ。 近年、共働き家庭や母子家庭の増加などにより、保育施設への入所を希望しても、定員を理由に受け入れられない「待機児童問題」が深刻である。 国や自治体は、保育施設を増やすためのさまざまな施策をとってはいるが、施設だけでなく、保育士の不足もまた深刻な問題と言える。 保育士が確保しにくい理由の一つに、厳しい労働環境が挙げられる。 保育施設によっては、早朝から夜遅くまで開所していて保育士の拘束時間が長く、シフト勤務によって時間が不規則だ。 就業時間中には手が回らない保育教材の準備作業を自宅に持ち帰るのはザラで、子どもたちの命を預かる重い責任に対して、給与が見合っていないと考える人が多いことも挙げられる。 「それでもやっぱり、私は子どもが好き━」 優香里がこの職業を選び、日々奮闘しているのは、決して揺らぐことのないこの思いがあるからであった。
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