248年 9月

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翌朝、ユキヒコは女王・ヒミコへの謁見を許された。ヒミコが他国の者に会うのは、異例中の異例である。 館の一番奥の薄暗い部屋に案内され、ここでヒミコは待っていた。 しかし、ヒミコの前には簾がかかっており、表情はもちろん、その姿かたちもはっきりと窺い知ることは出来ない。 ユキヒコがこの地に着いたのは、昨日の事である。自国からおよそ1ヶ月の旅であった。 そして館の前の草原で「生け贄の儀」が行われている事を知る。この国で5年に一度行われる、化け物から女王を守るための儀式であった。 ずっと以前から、化け物はこの地に5年に一度の周期で現れるという。そして決まって5人、処女を喰って姿を消す。 基本的にこの国の王には男子が就くが、ふさわしい者がいない場合、女王を戴く事になる。女王になるための資格は、就位前も就位後も男と交わらない事、つまり処女でいる事であった。 これは女王が子を成した時、その子と女王の兄弟との間に生じるであろう王位継承争いを未然に防ぐための知恵であった。 そしてこの国で、数代前の女王が、化け物に喰われた。その混乱で、この国は滅亡の危機に瀕したという。 以来、女王が就位している際、化け物が現れる5年に一度の秋、女王が喰われるのを防ぐために昨夜のような「生け贄の儀」が行われてきたのであったー。
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