248年 9月

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ここで初めて、女王ヒミコが言葉を発した。 「執政の無礼な発言、詫びます。ユキヒコ…、そなた、昨夜は討ち洩らしたが、次は討てると申すか?あのオロチを…」 簾の向こうから聞こえるヒミコの声は、か細く澄んで、非常に美しいものであったー。 「はッ、容易ならざる相手なれど、必ず討ち果たして御覧にいれます」 「よくぞ言うてくれました、ユキヒコ…。ではそなた、しばらくこの地に留まり、わたくしをオロチから守ってくれますね?」 「御意に」 ここで執政が口を挟む。 「しかし陛下、この者には返書を持たせて、国に帰しませんと…」 「なに、少しの間の事じゃ。長引くようであれば、誰ぞに持たせて行かせればよい」 ヒミコは相手国の事情など、どうでもよいといった口ぶりである。 「しかし、使者を当方の事情で当地に留め置く事は、外交の儀礼に反します。下手をすれば戦にー」 「黙りなさい!」 ヒミコは声を荒げた。 「ならば、そなたが返書を持って、彼の国に参ればよかろう。そこで相手の王に説明して参れ。これこれこうした事情で、しばらくの間、ユキヒコを預かるとー」 「姉上、何という事を…」 弟である執政は狼狽した。 このやり取りを黙って聞いていたユキヒコが、静かに口を開くー。
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