248年 9月

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「執政殿ー。あなたの行ってきた生け贄の儀は、陛下の身の安全をたった5年間、保障するに過ぎません。しかもそれは、国のためにこれから子を成してもらわなければならない少女たちの犠牲の上に成り立つ安全です。そんなものが、果たして本当の意味での安全保障と言えるでしょうか」 「なにー?!」 「あなたが生け贄などを用意するから、オロチは調子に乗ってこの地にやって来るのです。その事に、何故気づかないのですか?」 「おのれ、若造っ!」 執政は抜刀し、ユキヒコに斬りかかる。が、ユキヒコの敵ではない。あっという間に剣を奪われ、腕を逆に極められ床に組伏せられる。 「陛下、私はオロチを倒し、陛下とこの国に永遠の安全と繁栄をもたらしましょう」 執政を取り押さえながら、ユキヒコは高らかに言ったー。 「見事です、ユキヒコ…」 執政は引っ捕らえられ、投獄された。実の弟に対しても、ヒミコは容赦がない。そして、臣下の者たちに宣言するー。 「我が弟を解任し、これよりこのユキヒコに、執政を任せます。ユキヒコ、やってくれますね…?」 「身に余る光栄ではありますが、私はその任にあらず。これより政(まつりごと)は、陛下の親政と致しましょう。不肖ではありますがこのユキヒコ、陛下の補佐を致しとうございます」 「そなたが望むのであれば…」 ユキヒコが、この国の実権を掌握した瞬間だった。
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