2020年(令和2年)12月

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1箱12個入り¥660(税込)の普及品から、薄さ0.01㎜、1個で¥1,190(税込)の高級品まで、全国のコンビニやドラッグストアからコンドームが姿を消したのである。 『コンドーム品切れです。次回入荷未定』 入荷情報が出回ると、その店の前には開店前から行列ができる。並ぶのは、もっぱら男性だ。 中には転売目的で、大量に買い占める者もー。 『コンドーム入荷しました!お一人様1箱限定』 ネットの通販サイトでは上記の普及品に2万円の高値がつく。 「メーカーには十分な在庫がありますので、冷静な購買活動をー」 定例会見で須田(すだ)官房長官が国民に呼びかけるが、事態は収束どころか過熱する一方であった。 普段はそれほど頻繁に売れるものではなく、製造している会社も大企業、というわけではない。 休日返上で工場を稼働させるものの到底需要には追い付かない。やがてメーカーの在庫も底をつく。 こうした中、矢部首相が会見に臨むー。 「今般の男性装着型避妊具、いわゆるコンドームの全国店舗での品切れ・品薄状態を受け、政府として業界各社および異業種の関連各社に商品を発注致しました。数量は合わせて1億個であります。これを全国の各ご家庭、世帯に2個ずつ、無償で配布致します。今月中には発送できる見込みとなっておりますので、国民の皆様方におかれましては、どうか冷静な購買活動をお願い申し上げます」 コンドームを全国の各世帯に2個ずつ、無料で配布ー。 これにかかる費用は、233億円だという。 ネット、マスコミで一斉に批判の声が上がる。 『コンドーム配布て…』 『冗談だろ?』 『捕食対象がいない家にも送られてくる、ってコトだよね』 『そんな事をするお金と暇があるなら、1匹でもいいから化け物を殺してください!』 『送られてきても、いつ誰と使っていいのか分かりません…』 『ウチは娘3人いるんだよ!2個じゃ足りねえよ!』 しかし中には、こんな声もー。 『でもこれで、買うために店の前で並ぶ恥ずかしさから解放されます…』 "ヤベノゴム"と揶揄されたこのコンドーム、配布完了までに結局2ヶ月半を要した。 開けてみたら異物が混入していて回収、といった混乱もあったほどである。 実際に配られて、人々がこれを使ったかどうかは、まったくの不明であったー。
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