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あ…。
栄治の問いかけに、私はもちろん、涼子も押し黙りました。
そうです。幼い頃からいろいろなものを分け合って、共有してきた私たちですが、こればっかりは同時にする訳にはいきません。
栄治とする、順番を決めなければなりませんでした。
もちろん、先にした方がいいに決まってます。より早く、化け物に襲われる危険から抜け出せる訳ですし、それに…。
初めての相手、女になれるのです。栄治のー。
そして、こんな事も思いました。他の女としたばかりの男の人と、するのはイヤだな、と…。
ましてやその「他の女」というのが、昔から勝手知ったる親友だというのは、絶対にイヤでした。
もちろん、理屈ではわかっています。今はそんなこと言ってる場合じゃないと。
でも男性と付き合った事など一度もない私が思ったのですから、これは言ってみれば女の本能のようなものなのでしょうか。
涼子も同じ事を考えているのか、うつむいたままです。
すると煮え切らない私たちに、少しあきれたように栄治が言いました。
「ジャンケンで決めれば?」
もちろん、彼に悪気はなかったと思います。目の前にいる二人の女の自分に対する恋心など、知る由もないのですから。
それでも、私は唖然としました。女にとって大事なことを、そんなコトで…。
「ジャンケンなんかで決められるワケないでしょ」
涼子が怒りを露わにして言いました。
「じゃあどうするんだよ…」
栄治は困り顔です。
本来、化け物に襲われる事のない彼にとっては、どうでもいい事です。私たちなど放って、さっさとここから出て行けばいい。
でもそれをしないで、こうして私たちに付き合ってるのは、彼の人の良さであり、やさしさに他なりません。
栄治を責めるのは、酷というものです。
すると涼子が言いました。意を決した表情でー。
「わかったわ。先に、知美として」
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