1984年(昭和59年)8月

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栄治と二人きりになるのは、一緒にウサギの世話係をしていた小学5年の時以来です。 栄治はまだ、見た目も能力も他の男子とさほど変わりませんでしたが、私はその時から彼の事が好きでした。 栄治を好きになったのは、クラスの中で私が一番先。 当時、私の中にそんな自負があったのは、間違いありません。 もちろん、涼子よりもー。 だから彼と先にする権利は、私にある。 栄治の初めての相手になるのは、私ー。 「なんか、照れるな…」 彼が言いました。 「うん…」 初めてですが、私にだってそれなりの知識はあります。 「じゃあ、しようか」 「うん…」 教室には、誰かが持ち込んだパイプベッドがあります。マットレスも敷かれていました。 こんなものが置かれているのは、この部屋だけのようです。 栄治は背中に優しく手を遣り、私をベッドに(いざな)いました。 私の胸の高鳴りは、最高潮に達しています。 私をベッドに横たえると、彼は着ていたTシャツを脱ぎました。 栄治の、体ー。 分厚い胸。6つに割れた腹筋。 ベッド脇のスタンドライトの灯りに浮かび上がった、彫刻を思わせるような肉体美に、私は息を飲みます。 「知美も脱げよ」 照れくさそうに、彼が言いました。 恥ずかしい。でもー。 「…うん」 私は覚悟を決め、ブラウスのボタンを上から順に外していきます。 そして上半身、下着姿になりました。純白の、レースが付いたかわいいブラです。 栄治は目を見開き、ゴクリと唾を飲み込んだのが分かりました。 今でいう勝負下着、でしょうか。 まさかこんな事になるとは思ってもいませんでしたが、これを着けてきて良かったと、心の底から思いました。 「…触っていい?」 彼が訊いてきます。まるで子犬のような目ー。 「いいよ」 答えると、栄治はそっと触れてきました。ブラの上から、震える手でー。 どう?栄治。胸は、私の方があるのよ…。 涼子よりもー。
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