2002年(平成14年)6月

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谷村は慶子から離れると、コンドームを外し、慶子の腹の上に投げ捨て、そそくさとパンツとズボンを上げながら、言った。 「処女とヤッたのは初めてだ…。おっ、化け物いなくなったみたいだな」 「そうね。おかげで助かったわー」 言いながら慶子も、乱れた衣服を整える。 「でも谷村さん、アタシを殺さないんですか?」 谷村は一瞬、顔をしかめた後、醜い笑顔で答えるー。 「フッ、だから俺はやってないって言ってるだろ。それに今回の犯人は、殺してからヤッてるんだ。俺が犯人なら、アンタはもう、とっくに死んでるさ…ってオイ、何してるんだ、アンター!」 谷村の目に映ったのは、窓から差す外灯の明かりに照らし出された、銃口をこちらに向ける慶子の姿だったー。 「ふーん、今回の犯人は、殺してからヤッてるんですか…。谷村さん、あなた何でそんな事知ってるの?」 「……?」 「その事は、警察はマスコミにもどこにも、発表していません。つまり、それを知っているのは、警察の他には、犯人だけー」 「なに…?」 「谷村さん、これは『犯人しか知り得ぬ秘密の暴露』といって、自白と同じ効力があります。つまり警察は、これだけをもって被疑者を逮捕する事が出来ます」 茫然自失の谷村に、慶子は言ったー。 「谷村和真、あなたを新宿・中野・高円寺で発生した婦女暴行殺人の容疑で、緊急逮捕します」 「ちょっと待て!俺が何を暴露したって?俺は何も言っちゃあいない。アンタの空耳だろ」 他に聞いた者がいない事に、谷村は活路を見出だそうとした。しかしー。 慶子は、大量の白濁液で膨らんだコンドームを、口の部分をハンカチでつまんで、谷村に見せた。 「あなたの精液です。これは私の所有物であるこの避妊具に、あなたが自分の意思で放出したものです。違法に採取したものではありません。これをDNA鑑定して、一連の事件の犯人の型と一致すれば、あなたはもう、言い逃れは出来ません」 谷村は慶子の左手にぶら下がるコンドームを奪い取ろうと、襲いかかる。 パーン! 慶子の拳銃が火を吹き、銃弾は谷村の左大腿部に命中した。 「ぐあぁぁぁぁぁ…」 谷村は転倒し、のたうち回る。 慶子は近づき、見下ろして言ったー。 「アタシはね、アンタみたいな外道を(パク)るためなら、何だってするのよ…」 そして班のメンバーに、一斉メールを打つ。 『被疑者確保。場所はー』
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